Cloud Guitar
【クラウドギターについて 】
1977年、「For You」レコーディングの為にカリフォルニアのスタジオに滞在中、サン・ラファエルまでドライブしたプリンスとアンドレが立ち寄った楽器店で「サードニクス」のベースをアンドレが気に入り、プリンスが購入した。一説にはプリンスがこのベースを購入したのはサンフランシスコではなく、1976年にニューヨークにある楽器店の「ウマノフギター」だとの話も有る。このクラウドギターのモデルになるベースの製作者ジェフリー・レビンは70年代初めにニューヨークの「マッド・ヒューマン・オブ・ギターズ」で働いていた。当初マンドリンに似たベースを作ったがバランスが悪く、本体の重さで演奏が難しくなったので次に細長いホーンを備えた2つ目のベースを作り完成させた。ミュージックビデオ「Why You Wanna Treat Me So Bad?」と「I Wanna Be Your Lover」でアンドレがベースを演奏しており、数年後に「My Name Is Prince」と「The Most Beautiful Girl In The World」でソニー・トンプソンがこのベースを弾いている。

1983年、映画「パープルレイン」の製作準備をしていたプリンスは個性的なギターを作ろうとしていた。脚本の中でギターが最初に言及されており形や色については何も書かれていなかったが、新しいギターのアイデアを持って地元の楽器修理店「ヌート・クーぺ」(Knute Koupee)を訪れた。訪問時にオーナーのジェフ・ヒルが対応し、プリンスが希望するギターはジェフリー・レビンが製作したベースギターの形を元にボディは白色で、EMGピックアップと金色のハードウエア、そしてスペードのポジションマークが必要だと説明した。ジェフ・ヒルはデイブ・ルサンに製作を指示するが修理工のルサンにとってギター制作は全く別の技術と一度は辞退も考えるが、後悔すると思い引き受けた。ルサンはプリンスと話し合いを行おうとローディーやギターテックに連絡を取ったがプリンスからの返事は無く、完成までに直接話をする事は一度も無かった。

最初のギターはオヘイガン社が販売していた「シャーク」というギターを元に作られる事になり、1 か月半かけてルサンは手作業でデザインを作成、限られた道具を使いジャックの周りのらせん形状と複雑に彫刻された上部ホーンを彫刻した。完成したボディはシェクターのトミー・スティンソンによって白色に塗装されこのモデルは後に「クラウド1」と呼ばれた。
完成されたギターを気に入ったプリンスはこのギターが映画の象徴的なシンボルになると考え、デザインの商標を所有する法的文書を作成、ツアーでも使用するためにさらに2本のクラウド・ギターを追加で依頼した。「クラウド2」と
呼ばれるギターもオヘイガン製の物だったが、今回は「ナイトウォッチ」と呼ばれるモデルを使いクラウド・ギターへの改造を行った。
そしてワーナー ブラザーズの英国部門からはプロモーション・キャンペーンの商品とするためにもう1本ギターを依頼され、合計4本のクラウド・ギターが製作されたが現在「クラウド4」の所在は不明。3本のクラウド・ギターは12フレットのポジションマークの間隔によって区別することが出来た。

【1984-1985 Purple Rain Tour】
【Cloud 1】



@「クラウド1」
映画「パープルレイン」とツアーで使用された。外見上の特徴として12フレットのポジションマークの間隔が広い。





1985年6月5日
「Raspberry Beret」撮影


「パープルレイン」ツアー終了後、ラズベリーベレーのビデオ撮影前に再び白く塗装され、白のバックプレートも付けられた。
【Cloud 2】



A「クラウド2」
12フレットのポジションマークの間隔は標準。最もプリンスが気に入っていたモデル。



バリー・ホーゲン(
Barry Haugen)

バリー・ホーゲンは1984 年の秋のパープル レイン ツアーに向けてすべてのギターを準備するためにヌート・クーペに雇われた。


トミースティンソン(
Tommy Stinson)

デイブ・ルサンが組み立てた「クラウド1」はシェクター社のスティンソンがニトロセルロース・ラッカーで指板も含めて白く塗装した。。

Cloud 3



B「クラウド3」
12フレットのポジションマークの間隔は狭い。ステージで使用する頻度は少ない。



3本のクラウド・ギターは「パープルレイン」ツアー中に何度も傷つき、損傷したギターは飛行機でミネソタに送られ、空港にギターを取りに行った後、48時間から72時間という限られた時間の中で破損した部分の修理を行い、そして再び空港に届けて次のツアーの目的地に送る作業を行っていた。
デイブ・ルサン (Dave Rusan)

1970年代中頃からヌート・クーペで働いたルサンは1983年にロンドンの楽器店で9ヵ月働いておりキース・リチャーズ、ゲイリー・ムーア、ランディ・ローズ、ミッチ・ミッチェル等のギターを手がけた。1983年11月に帰国後再びヌート・クーペで働き始めた時にプリンスのギター製作の依頼を受ける。


マーク・サンプソン (
Mark Sampson)

ギターアンプの設計者及び「マッチレス・アンプ」の創業者。当時、昼間はストリートロッドショップで働き、夜はロックバンドで演奏していた。
1983年頃、状態の良いVOXアンプを探して中西部の楽器店を回りヌート・クーペでいくつかのVOXを見つけ、ギターのボディを塗装する事を条件でVoxアンプを譲ってもらった。そこでの仕事がクラウド2と3の塗装だった。
【1986 Parade Tour】
Cloud 1】



1986年最終日の横浜公演では最後の「パープル・レイン」を演奏中にギターを床に叩きつける。
【Cloud 2】





横浜公演では「クラウド1」と同じく「クラウド2」も床に叩きつけられてネックが折れる。
ヘッドはひどく壊れていたので、新しいネックの移植が必要だった。 楽器店で作業するための道具も専門知識も無くギター修理の師匠である David Pattersonに助けを求めた。 移植された新しいネックは、従来の O' ではなく、およそ 7 1/2° の角度を持っていた。

【Cloud 3】



「パレードツアー」で使用する為バリー・ホーゲンによって「クラウド3」は黒く塗られ、ネックはメイプルに変更された。


パープルレインツアー後にサンプソンとルサンはにヌート・クーペの修理工房を去り、バリー・ハウゲンは1985年から1992年まで修理の責任者を務める。「1991年にロン・トレイシーがそれらのギターを手にするまで、私はプリンスのギターのすべての修理と塗装作業を行いました」。
【1987 Sign Of The Times Tour】
【Cloud 1】




シングルレコードのジャケットにキャットと登場。ピックアップセレクターに白いキャップが付いている。

アルバムジャケットにも登場。




ボディをピーチ色で塗装され、サイン・オブ・ザ・タイムズ・ツアーで使用。
Cloud 2
1986年12月から1987年1月の間に「クラウド1」と「クラウド2」は修理後ボディは共にピーチにリペイントされた。12フレットのマーカーの間隔は2本とも同じにになったが、「クラウド2」にはトラスロッドカバーに「1」が刻まれた。


ピックアップセレクターは金色、キャップなし。



「クラウド2」を気に入っていたプリンス。
何度も壊れて修理していたのでサインのヨーロッパツアー後に
ネックを作り直さねばならなかった。その為2ピースのメイプルを使用し、新しいネックの中央で接合した。次のツアーに備えてバリー・ホーゲンはライトブルーに塗り替えた。このギターは「ブルーエンジェル」と名付けられ「I With You Heaven」でプリンスは"say hello to my little friend the blue angel"と呟く。
【Cloud 3】
「クラウド3」はツアーで使用されず。


【1988 Lovesexy】
【Cloud 1】



ボディはピーチ色のままツアーで使用。
【Cloud 2】

ウィング・チップが破損し、ツアーの後に新しい別のピースが移植された。

【Cloud 3】
「クラウド3」はツアーで使用せず。
【1989】
【Cloud 1】
「クラウド1」使用されず。
【Cloud 2】
1989年5月頃

プロモ用の写真では再びライトブルーに塗装され、トラスロッドカバーの「1」が確認出来る。この時点でポジションマークはトッドのまま。


1989年9月24日
Saturday Night Live


ポジションマークをバッドマークに変更。サタデーナイトライブに出演し「Electric Chair」 を演奏した。

【Cloud 3】
Music Video「Batdance」


「クラウド3」がビデオ「Batdance」で使用される。
ネックを交換しポジションマークはバッドマークに変更している。

※このギターが「クラウド3」ではなく、新しく作られたとの話もある。
 
【1990 Nude Tour】
【Cloud 1】
「クラウド1」はツアーで使用せず。
【Cloud 2】
1990 Nude Tour


ポジションマークはバッドマークのまま
【Cloud 3】
1990年2月(?)
「Elephants &Flowers」撮影



トラスロッドカバーに「4」の文字が入るが意味不明。

7フレットと9フレットにはローマ数字の「7」が描かれ「9」の文字は無い。意味不明。

1990 Nude Tour
「クラウド3」はツアーで使用せず。
「ヌードツアー」パンフレット



【1991 & 1992 Diamonds And Pearls Tour】
【Cloud 1】
1991年10月


ロン・トレーシーが「クラウド 1」 と「クラウド 2」 を同時にイエローに塗装された時の写真。
指板にはシンボルのデカールが貼られた「クラウド2」を持つトレーシーと、その隣にぶら下がっている「クラウド1」。
「クラウド2」は9月のアルセニオ・ホールショーで確認出来たウイング裏側の先細りが修復されている。

トレーシーはC1とC2の違いはブリッジ・ピックアップルートの位置の違いで確違い出来ると話す。




※1991年頃からクラウド 1 の判別が困難になる。
【Cloud 2】
1991年5月
Video「Cream 」撮影


1991年5月
Video「Gett Off」撮影


1991年9月5日
MTV Video Music Awards

「Gett Off」を演奏。

1991年9月9日
アルセニオ・ホールショー


このパフォーマンスでは、映像でウイングの裏側が先細りになっている事がわかる。
【Cloud 3】
「クラウド3」はツアーで使用せず。


※ツアー前にデイブ・ルサンが制作したこれらのギターが公式に「クラウド・ギター」と呼ばれるようになるが「ブルーエンジェル」のような特定の名前は付けられなかった。
【バリー・ホーゲン離脱】
1991年にバリー・ホーゲンはクラウド 1 と 2 に黄色の最初の塗装を行うが、ヌート・クーペとプリンス陣営の間が不仲になり、プリンスは彼のギターのために新しいギターテクニシャンとペインターを必要とした。その結果「ホフマン・ギターズ(Hoffman Guitars)」のビルダーであるロン・トレーシーに任された。

【1993 Act 1 & Act 2 Tour】
【Cloud 1】
1993年9月3日


1993年9月7日
Bagley's Warehouse
Aftershow



ロンドンのアフターショーでギターを床に叩きつけたのを最後にクラウド1はスミソニアン博物館に贈られる(?)。
【Cloud 2】
1993年
Act 1」 ツアー


1993年7月
Video「Peach」撮影

アンディ・ビーチがクラウド・ギターを作り始めた頃、何度も壊れては修理されて来た「クラウド2」の先端が欠けたヘッドは再成形され、ボディをエレクトリック・ブルー・パープルに塗装されたと推測される。
※1995 年 1 月初旬に作成された在庫リストでは、このギターの在庫番号のカラーには「
Purple/Blue」と記載されている。

「クラウド2」は 4 つのクラウド・ギターの中で唯一、オリジナルの O'Hagan ブリッジ・ピックアップルートを完全に保持している。

※このクラウド ・ギターはアンディ・ビーチが作ったものだという話もある。
【Cloud 3】
「Act 1」 ツアープログラム



1993年8月28日ドイツ
MTVコンテストで出品


コンテスト優勝者にリーヴァイからクラウド・ギターが贈られる。

アンディ・ビーチ(AndyBeech)

アンディ・ビーチはザック・ワイルドのギターテックとしてオジーのツアー中にプリンスのギターテクニシャンと知り合った。そのつながりでプリンスから最初に3 本のギターの注文を受け、その結果に満足したプリンスからその後も90年代を通じてギター製作を依頼された。依頼されたギターはクラウド・ギター27本とシンボル・ギター4本の合計31本だった。
ビーチが作るプリンス 用のカスタム ギターは、マホガニーとメイプルで作られていた。メイプルは特に適してると考えられた。
これらのギターはプリンスが使用したほか、ミネアポリスとロンドンにあるNPG ストアで販売された。アンディ・ビーチが製作した楽器はNPG ストアで販売される予定でも、プリンスがステージで使用する予定でも、すべて同じ品質だった。
長い付き合いの中アンディ・ビーチは経営陣や技術者とは話しをしていたが、プリンスには一度も会った事は無かった。
【1994】Club Tour
  1994年5月3日
Star And Bars.Monaco

クラブツアーではシンボルギターがメインに使われたが「クラウド2」と思われるギターも準備されていた。
   
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1993年12月(?)
"Smithsonian Museum"
Dave Rusan/Barry Haugen




1993年「クラウド1」はプリンスからスミソニアンに寄贈されたが、プロダクション・マネージャーは寄贈時にギターについての必要書類を付けなかった。アンディ・ビーチは自分が制作したと言うがスミソニアン詳細な部分を調べるためにギターをCTスキャンで撮影。破損部の断面には7色の層が確認出来た。
現在展示されているギターの説明にビルダーは「Dave Rusan/Barry Haugen」と明記されている。しかしギターを見たデイブ・ルサンはそれが自分が制作したクラウド・ギターではないと話す。
※このギターが「クラウド2」だという説も有り。
2020年6月19日
Julien's Auctions
シリアルナンバー:16549





「クラウド2」がオークションに出品される。※90年代後半から行方不明になっていたという話と2001年に盗難にあったという噂があった。
ウッドランドとジュリアンはギターが100%「クラウド2」の「ブルーエンジェル」だと証明するためCTスキャンを行った。ギターは最初は白だったがその後ピーチ、ライトブルー、イエロー、最後にブルーに塗り直された。ネックの6フレットと7フレットの間にひびが入っている。1993年にブルーにリペイントされた状態と判断された。
オークションでは6020万円で落札される。
現在の管理者は「Rock and Roll Hall of Fame」。
2016年12月15日
Bonhams Entertainment Memorabilia Auction
シリアルナンバー:0004



イギリスのオークションで出品された。

この黒のクラウド ギターは、売主が1993 年の MTV コンペティションで優勝して以来、めったにケースから取り出されることは無く大切にされて来た。
彼女はAct IIツアーのドイツのミュンヘンで彼らのツアーに参加し、ステージでプリンスを見て彼に会い、彼によるプライベートなパフォーマンスを体験した。
黒のクラウド・ギターは翌日のヴェルベークのライブ前にステージ上のリーバイ・シーサーJrから彼女に手渡された。
【Cloud Guitars】
16164 ■Purple/Blue (
ジュリアン)
16185 ■Yellow
16186 ■Purple/Blue (
ジュリアン)
16187 Purple/Blue

162160
16212 ■Yellow (
ジュリアン)
16213
16214
16215
16216
16217 Yellow
16218 Yellow
16219 Yellow
16200 ■Yellow (
Williesguitars.com)
16220 ■Purple/Blue
16221
16222 ■Yellow (
reverb.com)
16223
16224
16225
16226
16227
16228 Yellow
16229 Yellow
16231 ■Yellow (
Shecter社)

16549 ■Purple/Blue (
ジュリアン)(C2)
16644 ■Yellow (ヘリテージ)

0004 ■Black(
Bonhams Entertainment)


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