Mad Cat/Telecaster Style
【H.S.Anderson Mad Cat HS-1について 】
Mad Catの設計者:椎野秀聡
「H.S.Anderson」は1974年にESPの創設者である椎野秀聡氏がモリダイラ楽器と共同で『遊び心に溢れ高品質』なテレキャスタータイプを作るため、モーリスの工場で3人程の職人と立ち上げたブランド。ブランドのロゴマークには音に狂って荒ぶる魂を『恋猫』で表現し、猫のイラストは椎野秀聡氏の友人である山田敦朗氏によってデザインされた。「H.S.」は自分の名前「Hidesato Shiino」のイニシャルから取り、「Anderson」は1960年代に市街地を走るロードレースで活躍したニュージーランドのバイクレーサー「Hugh Anderson」に共感した事が名前の由来となった。


Mad Catのデザインはテレキャスターの完全なコピーではなく、ボディ中央のウォルナット材をベースにボディトップの下は3cmくらいのメイプル材のピースを貼り合わせてものが左右の質量と密度が均等になるように作られてる。ネックは21フレットのワンピースメイプル。ハードウエアはハードテイルストラトスタイルのブリッジと、ピックガードはヒョウ柄のようなべっ甲柄でピックアップブリッジサラウンド(ピックアップと弦の距離を調整するため)もピックガードと同じ素材でべっ甲柄が使用された。ピックアップはストラトタイプのシングルコイル・ピックアップをフロントとリアに設置している。74年に製作されたHS-1はすぐにHS-TE80と改名され1975年からはヘッドストックの裏側にシリアルナンバーが刻印されるようになった。

オリジナルのMad Catはモリダイラ楽器のH.S.Andersonブランドとして1970年代中頃から製造された。75年頃 (76年か?) にはハーモニカで知られるドイツの楽器メーカーHohner社のアメリカ支社からの依頼が有り、OEMギターとしてMad Catは日本で製造され海外に向けに輸出された。一般にMad Catと呼ばれていたこのギターはホーナーでは「HG-490」と呼ばれ販売されていた。しかし「Hohner」ロゴを付けられた形で販売されたギターはヘッドストックを模倣したとしてフェンダー社から訴訟を受け、HG-490 は生産中止となり70年代にわずか 500 本のみが製造される形となった。
80 年代に入りプリンスが映画「パープルレイン」で有名になった事でホーナー社は法的問題を避けるためにヘッドストックを変更してこのギターを再び韓国で生産することを決定、「Hohner Prinz」として販売されたがこのギターは古いHS Andersonやオリジナルのホーナーモデルの品質基準に達しなかった。
その後Mad CatはアメリカのBill Lawrenceブランドからも販売されるものの90年代にブランドは消滅した。しかし近年もMad Catは2009年から数年ごとにモリダイラから復刻モデルが販売されている。「Mad Cat」という名称はこのスタイルのギターおよび復刻版を指すのに一般的に使用されている。


【Fender Telecasterについて 】
プリンスは1970年代後半のある時期にホーナーMad Catを手に入れているが、ステージでは使われる事はなく1980年2月のダーティーマインドツアーまではナチュラルカラーのフェンダー・テレキャスターを使用していた。ボディにはプリンスが彫ったのか(描いた?)鳥が光る星を掴もうとしているかのような絵が描かれていた。その後このフェンダー・テレキャスターがどうなったのかは不明。


【プリンスのMad Catについて 】
プリンスは1970年代後半(77年〜78年)にミネアポリスのヌート・クーピーでホーナーHG-490を購入したが、実際にステージで弾いている姿を写真で確認出来るのは「ダーディーマインドツアー」の1980年4月頃から。プリンスは「ヒョウ柄」のピックガードがフェイクファーで覆われたステージ衣装やその他の機材とマッチしていたため気に入っていた。ピックアップは何度か交換されており最初は Fender Vintage Noiseless ピックアップ、その後 Kinman Traditional ピックアップに変更された。ノイズキャンセリングの目的でピックガードの下に 3 番目のピックアップも追加されたが、これは後に取り外された。プリンスのMad Catにはボディにワイヤレス・レシーバーが組み込まれているがこれはパープルレイン・ツアー中に追加された。プリンスの長年のギターテクニシャンであるタクミ氏は、プリンスのギアに関して語ることは滅多にないがマッドキャットについては今まで弾いた中で最高のテレキャスターだと述べている。

Mad Catの生みの親である椎野氏はプリンスについて「あんな気持ち悪いやつが使っても誰も買わないだろうと思っていましたよ(笑)。」「でも彼の音楽を聴いてみたら、音楽家として本当に素晴らしい。表現の仕方が本当にクリエイティブだよね。ファッションも、演奏も、楽曲も、ステージパフォーマンスも非常に頭を使う人だと感じた」。

【1985 テレキャスターレプリカ】
【サドウスキー製作のテレキャスターについて 】
プリンスとロジャー・シャドウスキー(Roger Sadowsky)によるギター製作の関係は、プリンスのキャリアにおいて重要な一部を占めていた。当時シャドウスキーはニューヨークを拠点とするギター製作者で、特にプリンスの象徴的なギターである「Hohner:Mad Cat」のレプリカやカスタムモデルを製作したことで知られている。1984年にプリンスのツアーでの過酷な使用やギターを投げるなどのステージパフォーマンスに対応するためサドウスキーはホーナースタイルのMad Catレプリカの製作を4 本を依頼された。 2 本は通常のステージ・ギターで激しい扱いに耐える頑丈なネックとボディ構造を重視し、他の2 本はオーガズムをシミュレートして観客を濡らすためのネック部分にホースが付いたギターだった。

シャドウスキーに製作依頼した理由の 1 つにロードクルーがホーナーを嫌っていたことが挙げられる。標準装備のピックアップはノイズが多くプリンスが好んだBossのエフェクターと組み合わせると音響担当者にとっては悪夢だった。ホーナーには最初ワイヤレスが内蔵されていたがステージでノイズを抑えるために後にEMGに変更された。シャドウスキーがホーナーのコピーを製作する際に受け取ったメモの 1 つには、これらのギターは最高級であるべきだということだった。その為製作されたギターにも最高級のピックアップを取り付けたことはほぼ間違いないがそれが何だったのかは不明だ。

ロジャー・サドウスキーはFacebookにこう投稿した。
「写真のアーカイブを掘り返したんですが、80年代にプリンスのために作ったギターの写真はこれしかありません。パープル・レイン・ツアーのリハーサルが始まったばかりの時に呼ばれて、製作した全てのギターは自分でミネアポリスに届けました。まず当時ホーナーが製造中止にしていた彼のホーナー・テレキャスターのコピーを2本作りました。次に射精するホーナーのコピーをもう2本作り最後の 2 つはそれらとは異なるテレキャスター・スタイルのギターでどちらも紫色で花が描かれています。」

【Hohner Telecaster Replica】
ロジャー・サドウスキー製作:2本
当時の画像からロジャー・サドウスキーが作ったレプリカと断定出来る写真が無い。


Ejacucaster (イジェクキャスター)
ロジャー・サドウスキー製作:2本
映画「パープル・レイン」のクライマックスでプリンスがスピーカーの巨大な山の頂上に登りギターを掴んで、観客に液体を浴びせる演出に使用された。当時プリンスは射精も出来て演奏も可能なギターを望んでおり、ギターはステージ外の石鹸液のタンクからボディにつながれ、ボディ背面に設置したコンプレッサーからトラスロッドの側面を通した銅製のパイプを通り、ヘッドストックの先端から噴射出来るように作られていた。このサドウスキーによって製作された2本のギターは「イジェクキャスター」と呼ばれていた。

【Telecaster Replica】
ロジャー・サドウスキー製作:1本(パープル)
紫の花柄のテレキャスターは1985年にPurple Rainツアー中のプリンスのために製作されてツアー終了直後に納品された。ボディはレゲエアーティストのウェイン・ジャレット(Wayne Jarrett)による花のアートワークが施され、ボディはメタリック・パープルで仕上げられていた。
ギターは1985 年10月にフランスのニースで撮影されたミュージックビデオ「アメリカ」でお披露目され、1986 年の Parade ツアーではプリンスとウェンディが頻繁に使用していた。
サドウスキーがプリンスのために作った 6 本のギターのうち、この紫の花柄のギターが最も多く使用された。このギターは1988 セクシーツアーの前のある時点で歌手兼パーカッショニストのシーラ E.の手に渡った。1995 年にシーラ E.に宛てた手紙の中で、サドウスキーはシリアル番号 179 がプリンスのために作った数本のうちの 1 本であることを確認しており、番号はヘッドストックの裏側に刻まれている。

仕様: アルダーボディ、25.5インチスケールのメイプルネック、24フレットの指板、Gotohシールドギアチューナー、DiMarzioハードテイルブリッジ、グラファイトナット。
ピックアップ: 当初はSeymour Duncanのヴィンテージスタイルピックアップが搭載されていたが、後にブリッジピックアップがHot Railシングルコイルに交換され、EMG搭載のCloudギターと競合する出力を得られるよう改良された。3層のピックガードも花のモチーフで紫に塗装され、ブリッジピックアップサラウンドは、プリンスのホーナーマッドキャットと同じ素材で仕上げられ、ブリッジのベースに取り付けられている。このギターは2024年のジュリアンズ・オークションに出品され38万1000ドル(約5千9百万円)で落札された。

【Telecaster Replica】
ロジャー・サドウスキー製作:1本(ピンク色)
ピンクの花柄のギターは実際にはあまり使われず、最終的にはペイズリー・パークに展示された。






プリンスは3本所有していたと言われているが1本は90年代の復刻モデルの事か(?)。
2016年のペイズリーパークの楽器倉庫の中にはオリジナルの「Hohner Mad Cat」と共に「Hohner TE Prinz」も確認出来る。TEはテレキャスター、Prinzはプリンスのドイツ語。このモデルは90年代に製造されたと思われる。










※複数の情報が有るため間違いも有り

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